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2022/10/10

曲目解説

第3回演奏会 プログラムノート

N.リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」 Op.35

この作品はリムスキー=コルサコフが最盛期に書いたロシアの管弦楽曲の1つで、アラビア文学を代表する説話集「千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)」を題材に作られています。この曲の最大の魅力は美しいメロディに加え、高揚感溢れるリズム、そして大きな編成ではないにも関わらず輝かしいオーケストレーションがなされている点です。作曲者の「管弦楽法の基本」は歴史的名著と言われ、今も尚世界中で読み継がれています。彼は和声法・対位法の研究を極めたことで、「シェヘラザード」という独創的な傑作に辿り着きました。

リムスキー=コルサコフ
リムスキー=コルサコフ
(1844-1908)

第1楽章 海のシンドバッドの船
第1楽章は曲中の素材の全てが詰まっており、全楽章の基本となります。まず序奏は①シャフリヤール王の主題で始まります。この主題はトロンボーンの力強いユニゾンが中心となり演奏されます。木管による穏やかな和音の後ハープの伴奏に乗って、優しく物語を語る②シェヘラザードの主題がソロヴァイオリンで演奏されます。①②は楽曲全体の動機と言え、何度も変奏されながら繰り返し登場します。これはベルリオーズの幻想交響曲で用いられた固定楽想と類似するものです。主部に入るとシンドバッドのお話が始まります。オーケストラの伴奏は波の動きを思わせる雰囲気に変わります。コントラバスをベースに、チェロがアルペジオで繰り返す分散和音の響きは海のうねりのようです。木管の優しくも前向きな主題が姿を見せ、ソロヴァイオリンと交わり盛り上がっていきます。王の主題を中心に最高潮に達した後、音楽は一度落ち着きます。その後再度盛り上がり王の主題が大きく出た後、音楽は再び静まります。王の主題と木管楽器の主題が交わり、音楽は波の動きと共に静かに結ばれます。

第2楽章 カランダール王子の物語
前楽章から続いてソロヴァイオリンの妖艶なシェヘラザードの主題で始まります。その後ファゴットが 3/8 拍子の気まぐれでありながら哀愁漂うカランダールの主題を提示します。中間部のAllegro moltoは一変し、金管の荒々しいファンファーレが響き渡ります。その後クラリネットソロなど様々な楽器が主題を展開し、打楽器や金管が力強さを増し前半部の主題がより華やかに帰ってきます。運命に翻弄されたカランダールの壮絶な過去を想起させるようです。ハープの儚げな旋律の後は静けさを取り戻しますが、再び力を増し激しい音の中で楽章は圧巻の終わりを迎えます。

第3楽章 若い王子と王女
弦楽器の優しい演奏で始まり、月明かりに照らされた美しい王子と王女の夢の世界を思わせます。ここに様々な楽器が加わり楽しげな雰囲気に変わっていきます。中間部は明るい雰囲気になり、スネアドラムの独特なリズムに乗ったクラリネット(王子)とフルート(王女)の快活な踊りが現れます。その後弦楽器による冒頭のメロディがより鮮やかに帰ってきます。シェへラザードの主題をきっかけに盛り上がりを見せ、ホルンソロが穏やかに響き渡ります。最後は木管楽器がシェへラザードの主題を歌い、可憐な弦楽器のピチカートが終わりを告げます。

第4楽章 バグダッドの祭り。海。船は青銅の騎士のある岩で難破。終曲
の楽章は、前の3つの楽章のメロディが再現される集大成ともいえる楽章です。第1楽章を想起させるシャフリヤール王の主題で始まり、そこにソロヴァイオリンのシェへラザードの主題が応えるように表れます。場面は打って変わり、6/16拍子の軽やかな舞踏曲(バグダッドの祭り)になります。フルート、ヴァイオリンに続き、トランペットの明瞭な音型が出てきます。その後は第3楽章の中間部が現れ、シェへラザードの主題も交わり華やかに盛り上がっていきます。最初の舞踏曲風の主題が再度出てきて、管楽器のタンギングが続きます。曲はさらに激しさを増していき、しばらくするとトロンボーンの王の主題が現れます。これは第1楽章の海の主題ですが、嵐で荒れ狂っているようです。第2楽章の主題がクライマックスを迎えると、音楽は静まります。その後ソロヴァイオリンがシェへラザードの主題を演奏すると、低弦の王の主題が静かに響きます。最後はハープと共にシェヘラザードの主題が現れ、物語はゆっくりと幕を閉じます。

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