-プロムナード-
私はムソルグスキー。
今日は亡き親友、画家ハルトマンの遺作展(展覧会)にやってきた。彼が残した絵画、水彩画、建築デザインが一面にならぶ。
かつて、共に芸術を極めることを誓った者。
気持ちを整えて、さぁいこう。
1.小人(グノーム)
大地の妖精グノーム。ひっそり地底の宝を守る小人。にょろりと伸びたとんがり帽子にぷくぷくした体。不気味な様子でこちらをじっと見つめている。
2.古城
これは…?中世イタリアの古いお城だ。吟遊詩人の奏でる音が、聴く者を異国に誘う。暗闇に響く詩のなんと寂しいことよ。
このまま遠い未来まで、形を変えず存在し続けるかのようだ。
3.テュイルリー
パリのルーブル宮殿前広場。大人たちのおしゃべり、こどもたちの遊びでにぎわう広場。きらめく噴水の水しぶき。夢のように無垢で楽しい世界。
4.ビドロ(牛車)
泥道の中、2頭の牛が大きな車輪をつけた荷車を引いている。ああ、まるで虐げられた人々を見ているようだ。暗い未来を暗示するかのごとく、足取りは重たい。
そうして、家畜は静かに去りゆく。
5.卵の殻をつけたひなどりのバレエ
バレエ「トリルビ」のひよこ劇場。ちゅんちゅんぴよぴよ。鳴いては跳ねて、また鳴いて!
ちょこちょこ飛び回るかわいいこどもたち🐣
6.サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
金持ちで傲慢な男と、貧しく卑屈な男。威圧的で野太い声のゴールデンベルクと、甲高い金切り声のシュムイレ、続く2人の言い争い。
最後はゴールデンベルクが圧倒的な力でねじ伏せる。
7.リモージュの市場
フランスのちいさな町リモージュ。市場で買い物とうわさ話をする女たちの愉快な騒ぎ。「奥さま、おもしろいお話がありましてよ」
終わりそうで終わらないおしゃべりはいつまで続くのやら。
8.カタコンべ
-死せる言葉による死者への話しかけ-
古代ローマ地下墓地。洞窟に響く亡霊の咽び声、悲しきレクイエム。
…無限の闇に、一筋の光が差し込む🎺
親友ハルトマンに追悼の意を込めて。
(参考: V.ハルトマン《パリのカタコンベ》)
9.鶏の足のついた小屋
-バーバ・ヤーガ-
時計のついた小屋に、鶏の足が生えて立っている。そこに住むのは魔女バーバ・ヤーガ。森のざわめきは彼女たちの仕業。臼に乗ってほうきを携え暗闇を飛び回る。
やがて一夜の嵐のように去っていく。
10.キーウの大門
ウクライナ キーウ市の建設デザイン。ハルトマンが描く希望。聖歌のごとく、街に鐘の音が鳴り響く🔔
「祝福あれ、主の御名によって来る人に」。
暗い世の中を照らす、我らが芸術の信念よ!
ハルトマンの芸術作品は、私に大いなるインスピレーションを与えてくれた。
かつてない高揚感…彼が生きた証を残すべく、溢れる想いを音にして書き記す。この遺作展を巡り、私が感じたことを表現しよう。
そして、音楽「展覧会の絵」がうまれた。
参考:V.ハルトマン《パリのカタコンベ》
ノーム 不思議な小人たち 新装愛蔵版(2017)
ビリービンとロシア絵本の黄金時代[改訂版](2019)
junaida IMAGINARIUM(2022)
BABEL Higuchi Yuko Artworks(2022)
エドワード・ゴーリーを巡る旅(2023)