四季
これはロシアのしきのおはなし。ちょっとのぞいてみよう。
ちょっとのぞいてみよう。
冬 -winter-
冬のはじまり
ロシアの冬は、魔物が住んでいる。
しずまりかえるゆきやま。みみをすますと、きーんと音がきこえてくるよ。こごえる冷気、大地をゆらす、ふぶき。やがて魔物がすがたをあらわす。つめたくうつくしいふえの音に、こころうばわれる。
4にんの精
冬の精たちがおどっているよ。
しもは魔法でこおりのはなを咲かせる。
こおりはかがやき、ひえたこころをとかす。あられはいたずらっこ、コツコツ。ゆきはしっとり、つつむようなやさしさ。
愛らしい冬のすがた。
冬のおわり
2にんの小人グノーム。火石でまきに火をつけると、冬におわかれ。ねむっていた生命がめをさます。春をつげるつのぶえとハープは、はなをよぶ。
あたたかな光のよかん。
春 -spring-
春
春がやってきた。
春のまわりには、はなが愛らしく咲いている。あざやかなバラ、ことり、そよかぜのゼピュロス。あたたかな光に包まれおどる、ゆめのせかい。
やがて熱がちかづき、春を夏にかえるよ。
夏 -summer-
夏の情景
春から夏へのグラデーション。
大地にねっぷうがふくと、むぎの葉がゆっくりと波うつ。そらはあおく、生命のいぶきをかんじる。かがやきのきせつのはじまり。
ワルツ
ふかいあおむらさきの矢車菊と、あざやかなあかのケシ。ちいさな矢羽は上品で、こころをいやす。赤いはなびらは陽気で、ふわりとゆれる。かぜに吹かれておどるすがたは、ゆうがなワルツ。
舟唄
森のおくでみつけたしんぴのいずみ。そこに住まうは、みずの精ナーイアス。すいちゅうにさしこんだ光は、きらきらはんしゃする。
あわにふれれば、はかなく消えてしまう。ナーイアスのやさしい歌声に、こころうばわれた。
とうもろこし
とうもろこしの精。あたたかいひざしを
たっぷりあびたその実がはじける。土のにおい、こどものわらいごえ。みんなに見守られ、たのしくあそんでいるよ。
夏のおわり
むぎの葉がみだれる。ふえの音とともに
やってきた、サテュロスとファウヌス。
いたずら好きなやっかいもの。はなをおいかけると、そよ風がたすける。やがて2人がつかれて大地にかえると、ぶどう畑がみえてきた。
秋 -autumn-
バッカナール
秋がきた。
飲めやうたえやおまつりさわぎ。おさけと収穫の神バッカスをたたえよう。おうごんのはっぱ、かがやくぶどう酒。まちわびたよろこびのきせつ。みんなわれをわすれておどるのだ。
小アダージョ
秋のよるはせつなくにがい。つきのひかりはやさしく儚い。ときが止まったかのような、ゆめの中。あの日のことを、おもいだす。
秋のおわり
おどりもいよいよおわり。サテュロス、むぎの葉がかおをだし、次々とものがたりがよみがえる。やがてかれはの雨がふりそそぐと、くらやみがやってくる。
アポテオーズ
そらにひろがる満天のほしぞら。グノーム、ナーイアス、サテュロス。すべてが星座となってよみがえり、大地をてらす。大団円のフィナーレ。
参考:アルフォンス・ミュシャ『四季』(1897)